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(毎月一回の予定です)
ガーナのおすすめ本商会(15)
「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。」
著者・青柳碧人
今回紹介する本は、「赤ずきん、旅の途中で死体と出会う。」です。
作家の前作「むかしむかしあるところに、死体がありました。」という同シリーズ本を以前に読んでいたので、書店の新刊コーナーでこの本を見つけたとき、シリーズなら読んでみようと購入しました。前作も面白かったので読んで見ようかなぁと軽い気持ちで手に取ってみたのですが、本当に同じ作家が書いたの‼️ と思うくらいかなり攻めている作品でした。
読み進めていく手がまったく止まらずあっという間に読み終えてしまいました。
話の内容を一言でいうなら、赤ずきんによる推理ミステリー小説です。
赤ずきんが旅をしながら次々と起こる殺人事件をビシバシ気持ちよく解決していきます。赤ずきんや、ヘンゼルとグレーテルなど童話の登場人物が出てきますが、いわゆる童話の「赤ずきんちゃん」のイメージとは全く違う、新しい物語なので先入観を持たずに読むことをおすすめします。
赤ずきんが犯人を問い詰めるシーンで、「あなたの犯罪計画は、どうしてそんなに杜撰(ずさん)なの?」という台詞があります。思わず赤ずきんカッコいい!と本に向かって言いたくなるような場面です。まるで探偵ホームズのように、どんな計画も赤ずきんにはお見通しという頭脳派のキャラは、読んでいて気持ちよくなります。赤い頭巾をかぶっている赤ずきんちゃん、実は切れ者という設定がたまらないです。
物語は「ガラスの靴の共犯者編」「甘い密室の崩壊編」「眠れる森の秘密たち編」「少女よ、野望のマッチを灯せ編」の4つにわかれています。
「ガラスの靴の共犯者」はシンデレラと赤ずきんが乗っていたカボチャの馬車が、ある男を轢き殺してしまう…という殺人事件です。最初なので単純なトリックの話になっています。物語に推理のヒントがたくさん隠れているので、犯人を探しながら読んでみるのもいいかもしれません。
私がおススメする話は「甘い密室の崩壊編」です。旅の途中、泊まるところが見つからない赤ずきんに、ヘンゼルとグレーテルとそのお父さんがミートパイをご馳走してくれます。そうしてなかなか帰って来ないお母さんを探しに、お菓子の家に行ったところ、倒れた食器棚の下で死んでいた、という話です。この話の見どころは、ヘンゼルとグレーテルの関係です。二人ともお母さんに暴言や暴力を振るわれていたのですが、その影響でヘンゼルがグレーテルに歪んだ愛情を持つようになります。それが事件の鍵となるわけで、作中、赤ずきんも言っていましたが、二人の寝室はヘンゼルにとっては甘く、グレーテルにとっては苦痛な密室だったのではないでしょうか。ネタバレになるので、続きはぜひ本を手に取って確認してください!
最後の話の「少女よ、野望のマッチを灯せ」では、赤ずきんがなぜ旅をしているのかの理由もわかる、笑いあり涙ありの、締めの話です。エレンというマッチ会社の社長になった少女との戦いは、今まで解決して来た事件の関係者と一緒に立ち向かっていくので、まるで「プリキュアオールスターズ」のような気分になります。計算高いマッチ売りのエレンと、頭脳派の赤ずきんとの戦いは、二人の生い立ちも相まりかなり感情移入してしまいました。
大人も子どもも関係なく楽しめる一作です。赤ずきん推理ミステリー小説をぜひ読んでみてください。
ハロウィンに異常に熱血なガーナでした。
2020/10/28