かん子の連載

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(毎月一回の予定です)

ガーナのおすすめ本商会(16)

「ただいま神様当番」

著者・青山美智子
宝島社

 今回紹介するのは「ただいま神様当番」という本です。これはお母さんと本屋に行ったら、珍しくお母さんから「面白そうなのあったよー」と持ってきてくれたのもので、案の定、私の好みでした。

 作者は青山美智子さん。この方の本をはじめて読んだのですが、雰囲気や書き方から、前にも読んだことのなるような懐かしさを感じた一冊でした。

 話の内容は、OLや小学生、男子高校生などさまざまな年齢や立場の5人が、いつも同じ時間のバスに乗り合わせていて、全員がそれぞれ悩みを抱えているという設定です。そこに現れたやっかいで、わがままでむちゃぶりなお願いをしてくる神様。その神様の“当番”をすることになる話です。神様当番の期間は、腕に大きく「神様当番」と書かれます。その手が神様の意思で動き出したりすると困ることがたくさん起きます。でもそれによって新しい生き方や、暮らし方を見つけられたりもします。読んでいるだけで、世の中、自分の見方ひとつで世界が変わるんだ!と、思わせてくれる、そんな本です。

 この本の鍵となるのが神様という人物です。ジャージ姿に頭の上だけハゲた落ち武者みたいな髪型なので、到底神様には見えません。そのへんてこな神様が、子どもっぽい口調や考えで、主人公を明るい方へ導いてくれます。

 一番興味深い場面は、婚活や人間関係でモヤモヤしているOLの水原咲良と神様とのエピソードです。咲良はキュービックというバンドが好きなのですが、なぜか神様もそのバンドのファンで、一緒に歌ったり、バンド話で盛り上がる関係になります。とはいえ神様なので、朝のバスでいつも立っている妊婦さんを座らせるために、おじさんを席からどかそうと“神様当番”の腕が動かされる時もあります。ある日は、同僚のユイちゃんが今月で退職すると聞いた時、主人公の咲良ちゃんと一緒に落ち込みます。「なんで言ってくれなかったの?ユイちゃん嫌い!」と神様が言ったりします。この話を読んでいて感じたのは、神様の言動は、本当はやりたいけどできないこと、隠したい気持ち、そんな良いとも悪いともいえない、もう一人の自分なんじゃないかと思いました。

 お話を読んでいて、作者が伝えたいことはこれかなと思ったのが、神様は普通の人と同じだということです。神様は主人公を操ったりできますが、やっている事は普通の人の自然な振る舞いと同じで、特別なことはしません。

 私もすこし前に、心を閉ざしていた時期があって、図書室登校?みたいなことをしてましたが、そんな時の自分にこの本を渡したいです。どうしても心が病んでいる時は、自分の見方や、日常の過ごし方次第で、すぐにでも自分は変われるというのを忘れてしまいがちです。なので、やっかいな神様がきっかけで明るくなれる、そんなあったかいストーリーのこの本を読むことによって、気持ちも明るく前向きになれます。私も本をおすすめしたり、友だちの気持ちに寄り添ってあげたりして、この本の神様みたいに面倒くさくてお節介なヤツだけど元気をもらえる「いないと寂しいなぁ」と思ってもらえるような人になりたいなと思ったりしています。私自身の話も入ってしまいましたが、そんな前向きになれる本なのでぜひ読んでみてください!

アイルランドにめっちゃ行きたいガーナでした。

2020/12/02