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(毎月一回の予定です)
ガーナのおすすめ本商会(19)
「ちいさなちいさな王様」
著者・アクセル・ハッケ
講談社
毎日が忙しく、やりたいことがいっぱいあるガーナです。最近、カズオ・イシグロの新作「クララとお日さま」を読みはじめました。理解できないところが多々あり、読み直して考察しているのですが、なかなか分かりません。
ただ、ころころ変わる人間の気持ちをクララが観察し、どう感じるか、というのは面白く、近いうちに紹介しようと思っています。
今回紹介する本は「ちいさなちいさな王様」です。この本はいつも通り、よく行く本屋さんで雰囲気だけで入手したものなのですが、文章量も少なく、読みやすいうえに、何度読んでも飽きない、すごい癒し本です。
寝る前や、ふと時間がある時に読むのにとてもおすすめなので紹介しようと思います。
ある日、ふらりとやってきた「僕」の人差し指サイズの王様と、主人公の「僕」が、たわいもない話をしたり、ちょっとだけ出かけたりする、そんな話です。この話のいいところは、この「ちょっと」や「たわいもない」という部分で、ファンタジー疲れがひどい私には、読みながら寝落ちできるぐらいの冒険度なのでとてもよいです。だからといって、くだらないのか?となるとそうではなく、きまぐれな王様の話の内容が意外に深かったり……、じわじわと心に響く感じです。さらにこの本の良いところが、ファンタジーといえばよくある長い前置き。私がファンタジー小説の1巻を何度も何度も読まない理由は“これ”です。
最近私も、ファンタジーの世界に行くタイプの小説を考えてスマホのメモに溜め込んでいるので分かりますが、前置きは一番書いていて面白いのです。遠足の前日のようなウキウキした感じで、これが終わったらこう展開してこう持ってきて……と考えるのは、中盤や後半よりも導入部分が俄然楽しいのです。この本は、それがバッサリととばされていたのでびっくりしました。ただ、読み進めて行くたびに、この本の仕組みがわかり、前置きがない理由も納得しました。
最初に書かれる前置きのような説明は、王様が来ました、というところと、王様のプロフィールのみです。「十二月王二世」という名前や、どんな見た目でどんなものを着ているか、そして王様の好きな食べ物、グミベアのことだったり、それは最初に必要なのかな?という内容ばかりですか、私はそのはじまり方が自然でいいなと思いました。そんな王様の自己紹介が終わると、もう次の話題「大きくなると小さくなる」について話し出します。
「おまえのところのことについて、ちょっと話してくれるかね」というと主人公の僕も話し出す、といった感じです。自分の体より少し小さいぐらいのグミベアにかぶりつく王様の姿を想像するだけで、単純に癒されます。「僕(人間)」の話す生まれた時は小さくて、大人になるとにつれ大きくなる、という人間の成長に、王様は「非論理的だな」と言って、大人になるほど小さくなる、という王様の世界の話をします。そんな王様の話の中には「王様名言集」をつくってもいいほど、勇気づけられる言葉たちが載っているので、モチベーションを上げたい時にもいいかもしれません。最初のテーマ「大きくなると小さくなる」の他にも「眠っている時に起きている」だったり、テーマごとに話は進んでいきます。
僕と王様の日常は、考えさせられたり、感動したり、少し冒険したり、とスラスラと読め、そして寝落ちし、王様の夢を見れたり見れなかったり……。
疲れているときの読書にもってこいです。
王様と会えるなら、一緒にスマホのゲームをしたい児童会長に当選したガーナでした(イケメンくんに勝ちました!)。
2021/03/17