かん子の連載

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(毎月一回の予定です)
ガーナのおすすめ本商会(24)

「ハーブガーデン」
著者・草野たき
絵・北見葉胡
岩崎書店

 新型コロナウィルス感染症のせいで、運動会がズレ込み寒い中の練習および無理矢理の決行に怒りを覚えているガーナです。

 今回は「ハーブガーデン」という作品を紹介したいと思います。この作品は、授業中に先生から「残り時間を自由に使っていいよ〜」と言われた時に、急いで学校の図書館に行き見た目の雰囲気だけで借りた本です。読み始めるまではあまり特別な感情はなかったのですが、読んでいるうちに、いままで紹介してきたものとは違う感覚の本だなと、思ったので紹介します。

 話の内容は、夢も目標もない、誰にも嫌われたくない、そんな、自分を抑えた少女・由美が自分の憧れのモデルと似ているお姉さんに連れられハーブガーデンに行くというところからはじまります。しかし、自分の思っていたことと違っていたり、いろんな嫌な出来事にあい、どんどん自分を追い詰めていってしまう……、そんな話です。

 私が元々、思春期の女の子の心を描いたような話が苦手なのもありますが、主人公の由美がマイナス思考というか、他力本願な性格で、読み始めの頃は、読んでいること自体も苦痛に感じて「この話、違ったな」と思っていました。ところが、読んでいるうちに、心の中の黒くて嫌な部分を最初にはっきりと見せることによって、さまざまなことを通して、前向きに変わっていく由美に、いろんな気持ちが入り混じり、最終的には涙が出てしまいました。

 この作品のすごいところは、出てくる登場人物がほぼ全員、嫌な感じだということです。よくある物語やフィクションではありえないような設定かなと思います。たとえば主人公がネガティブでも、周りに明るい子がいて、変わっていける雰囲気を感じるパターンが多いなか、全員が嫌な感じなのでびっくりでした。

 たとえば、モデルに似ている女の子・綾芽が「お金出してくれるよね?」と言ってきた時は、流石に「急にお金って、ひどいな」と思いましたし、普段の行動からも、人のことを考えられない自己中心的な部分が滲み出ています。他にも、多種多様なキャラがいるのですが、何故だか憎めません。おそらく、人間らしいと思えるからだと思います。いいことを言っているなぁと思った人の態度が悪いので、なんとも言えない気持ちになります。ハーブガーデンの主人のすみれさんまでもが、ちゃんとしていなかったりします。すみれさんが、「結局このハーブガーデンは、私が魅力的じゃないからどんなに草花が綺麗でも、そのものを好きになってくれる人はいない」と言った時など、心にグッと来るものがありました。

 由美と同じ目線で読むと、大人でも、子どもでも、誰にでも、ままならい所や、抱えてるものがあって、辛いのは自分だけではないんだということをあらためて学べたと思います。レビューだけでは伝えきれないほど、複雑な話だったので、ぜひ読んでみてください。

 余談です。最近、ジャンプマンガの「スパイファミリー」という話にハマっています。名門校潜入のため、家族を作れと命じられた凄腕スパイ黄昏が、養子を取るのですが、その娘は超能力者。おまけに妻は暗殺者で……、といった作品です。心が読めてしまう娘のアーニャ目線なので、みんなが隠していることが、読者にはバレバレな展開でおもしろいです。世界を救おうと奮闘したり、あるいはしなかったり、バトル系コメディーです。ちなみに「少年ジャンプ+」というアプリだと、会員登録なしで、一回だけなら無料で読めます。試しに読んでみてください!

漢検に受かり安堵するガーナでした。

2021/10/28