かん子の連載

【赤木かん子還暦おめでとう企画】 47 かん子さんのことば

かん子さんのことば   by岩手県 藤澤陽子

『ピラミッドを掘っていい、と言われて行かないエジプト学者はいないよ』

―公共図書館改造のアドバイザーをお願いするにあたり、言われた言葉です。
もともと学校図書館並みの予算しかない図書館でしたので、十分な謝礼もお支払いできないと恐縮していた時に、おっしゃっていただきました。
この言葉に、かん子さんの図書館にかける純粋な思いやお人柄がよく出ていて、この方なら、半端なことなく、本当に魂込めた良いアドバイスを頂けると、曇りなく思えた瞬間でした。

忘れられない言葉です。
実際そのとおり、今現在進んでいます。

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『読む目的は何ですか?』
『子どもたちに幸福な気持ちになってもらいたいから』
『かならず成功する読み聞かせの本』p7の言葉です。

読みきかせをしていて
”子どもたちに良い本を手渡しましょう”
と言われると
「良い本って何?誰が決めるの?」
”読む力は生きる力”……。
「うーん、すべてがそうとは限らないような…。読まなくても生活力ある人もいるし、読むけど生活力ない人もいるよね」
と、ひねくれものの私は突っ込みを入れたくなるのですが、この言葉には、なんの疑問も突っ込みもなく
「うん、そうだよね」
と心にストンと落ちました。
以来「読み聞かせ」の講習を依頼されると、必ず最初に引用させていただいております。
同じように子どもの幸福を思う仲間を増やそうという魂胆です。

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『”本読み”は”芸能”。読む人は”芸人”。他人の子供にまで読んであげる立場の人はセミプロか、プロ』
『中学生以上には”プロ”でないと』

ボランティアをしているなかで感じたもやもやがすっきりした言葉です。
そして、読み聞かせボランティアをする中で「語り」を東京までプロに教わりに行こう、と私の肩を押したきっかけになった言葉です。
相手がおはなしを「聞かされてる」のか「もっと聞きたい」と思わせるのか……。

目的が聞き手の幸福感ならば、こちらが力量を磨かなければ、下手するとただのボランティアの自己満足になりかねない、と思いました。

特に学校でやる場合、子どもは逃げられないですから。
それで、読み聞かせボランティアの講習会を依頼されると、必ず

「読み聞かせは芸能、みなさんは芸人。芸は磨くもの」

と入れています。
なにで読んだか忘れましたが、”公園で読み聞かせをして、お客さんが次回も楽しみに集まってくるのが「プロ」”というのもあったと思います。私は公園で公演はやっていませんが、いつも心においています。

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『ボイスやらない?世界が変わるよ』

すごい先生を紹介して頂いて、本当に世界が変わりました。

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『遅れたら、戻ってくればいいよ』

夜行バスの乗り場を東京と新宿と間違えたときに、メールでいただいた言葉です。
なんてあったかいんだろうと思いました。しかも
「うち来ればいいよ」
でなくて
「戻ってくれば」
という表現が、なんかとても温かい感じがしました。

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『長編の読み方、短編の読み方は違う。先生方は、教わらなくても読めた人たちだから、教え方がわからない』
『報告書の書き方も大学でもきちんと教えられていないところが多い』

なるほど、そのとおり!
そうか!
と思いました。
私も教わってないし~。

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生まれた時の環境、プレートで文化が違う話

も、発想したことがなかったので、目から鱗。相手を理解するときに、それぞれ生きてきた環境や時代が違うということを念頭に置くのを忘れないようにしよう、と思います。

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図書館員がただの倉庫番になってはいけない

というのも、一般事務から図書館に回された身としては、ものすごく納得。図書館の歴史を学び、NDCの成り立ちを学び、一般民から見たら「?」に思えていたことに、すべて答えが出て、本当にすっきり!
かん子さんのプチ改造した書架に、お客様がカウンターでわざわざ
「とても良い」
と声をかけてくださる。
ほんとにすごい!

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最後に、言葉ではないのですが、
小学校の改造をした時に、改造後もご自分のポケットマネーで本や雑貨を贈ってくださるなど、たびたび気にかけてくださいました。
それは、今の公共の改造についても、深夜でも「あの本を入れて」等メールが入り、”頼まれ仕事”ではなく、本当に、町の図書館を情熱を傾けて常に考えてくださっているのがわかります。
子どもたちにこの本を見せたい!
町の人にこの本を見せたい!
そういう思いがびんびん伝わってきます。

理論と実践と結果が3拍子揃う、というのは、なかなかないことだと思っています。
それが、リアルタイムで、時代の流れと一緒に進化していく。
それが、かん子さんの一番のすごさだと思います。

また、おいでになった時も、お疲れで空き時間に眠っていても、講座の3分前に起こしに行くと、そのまま講座に入られて、すぐ講演を始める、しかも、中身が明確でわかりやすい!
この切り替えは”プロ中のプロ”
一日ご一緒していても、いつの間に仕事をしているのか、いつの間にあれだけの情報収集をしているのか、いつも不思議に思います。しかも、いつも慌てることなく、切羽詰まった様子もなく、ものすごく面倒見がよい…。

本当にたくさんの方とつながっていると思いますが、心配りがすごい、といつも思っています。私だと、どの人がどうだったかごちゃごちゃになりそう。

よく、びきこちゃんは、3人のすごい師匠についたから、と先輩に言われます。
最初に飛び込んだ語りの古屋さん、そして、かん子さんと、かん子さんご紹介されたボイスの藤田先生。
本当に、そのような出会いに感謝です。それは、人生の中で、最高に素敵なことだと思います。