LGBTQの本棚から 第5回 リリーのすべて
今回ご紹介するのは「リリーのすべて」という映画です。
2015年制作、ですから、まだ新しい作品ですが、テーマは1930年……という凄く早い時代に、世界で初めて性別適合手術を受けたMtF(Male to Femaleの略、男性から女性)のリリー・エルベ、というデンマークの画家の生涯(実話)をもとにした映画です(原作は2001年に発売)。
『1926年、デンマーク。
風景画家のアイナー・ベルナーは、肖像画家の妻ゲルダに頼まれて女性モデルの代役を務めたことをきっかけに、自身の内側に潜む女性の存在を意識する……。
それ以来「リリー」という名の女性として過ごす時間が増えていくアイナーは、心と身体が一致しない現実に葛藤する。ゲルダも当初はそんな夫の様子に戸惑うが、次第にリリーに対する理解を深めていく。』
(映画.com http://eiga.com/movie/82988/ より引用)
という内容です。
監督は
「英国王のスピーチ」
のトム・フーパー。
主人公リリーを演じるのは「ファンタスティックビーストと魔法使いの旅」
でも主役を演じたエディ・レッドメイン。
まだ性同一性障害が知られていなかった1926年、リリーは内科から精神科まで、たらいまわしにされました。
医者は一様に精神異常、性的倒錯だといい、謎の治療をされたりしてリリーは疲弊していきます。
苦悩する日々の中で、その時代に珍しく
「身体を心に合わせる」
という考え方をもっている医師に出会い、ついにリリーは自分らしく生きる道を見つけます。
しかし世界初の性別適合手術ですから、半ば実験のようなところもあり、それを知っていてもリリーは、手術を受ける決心をします。
技法が研究され、かなり安全で安定している現代ですら勇気のいる手術なのに、当時それを受けた彼女はものすごい勇気の持ち主ですよね。
時代的背景もですが、役者の力量にも圧倒されました。
優男のアイナーが、リリーへと変わっていくときの表現力は、尋常じゃなく凄かったです。
姿は男でありながら、中身は女であることを表情だけで表現するところは鳥肌が立ちました。
また、リリーの妻であり理解者であるゲルダの苦悩も繊細に描かれています。
愛する夫が女性になっていくのですから、思うことはたくさんあっただろうし、苦しみもしたでしょう。
いろいろもうわかっている現代でも、ゲルダのように振る舞うことができる人がどれだけいることか……。
ゲルダは最後までリリーを支え続けるのですから……。
二人とも、本当に強くて美しい……。
R15指定の映画なので小中学生は見ることができませんが、高校生からは見られるので、授業の一環として見るのもいいかもしれません。
授業で見るには衝撃的すぎますか?
本やマンガは苦手……という人にとっても、映画はLGBTQについて知る、かなり有効なジャンルだと思います。