LGBTQの本棚から 第7回「カミングアウト・レターズ」
今回ご紹介するのは
「カミングアウト・レターズ」(太郎次郎社)……。
副題に「子どもと親、生徒と教師の往復書簡」とある通り、手紙での親子や生徒先生間でのカミングアウトを集めた本です。
前書きに
『自分が同性を好きであることに気づいた子どもたちが抱える孤独感は
「異性愛が当たり前」
な家庭の中で、自分のその思いが家族と分かちあえないものだと感じることから始まります。
「これは話してはいけないこと」
「わかってもらえるわけがない」
と思い、自分のありように、ひとり悩むのです。』
とあります。
家庭というのは、自分を偽ることも飾ることもしなくてよい、落ち着ける場所でなくてはならない……。
けれども、自分の性的指向を自覚した瞬間から、本来寛げ、ほっとできるはずの場所が緊張する場になってしまうのです。
これはセクシャルマイノリティの問題だけではなく、離婚や、アルコール依存症、ネグレクト、などなんらかの形で家庭が落ち着ける場所でなくなってしまった時、子どもたちは安心できる場所を失くし、辛い状況に置かれるのですが、そのなかのひとつにセクシャルマイノリティもあるのです。
なので、カミングアウトは大変重要な問題になります。
家庭だけではなく、当然、友人関係や職場でも……。
Ⅲ章の解説
「カミングアウトを考えているあなたへ、カミングアウトを受けたあなたへ」
ではカミングアウトがなぜ必要なのかを教えてくれます。
「カミングアウトなんてされても困る…」
「別に黙ってればいいじゃん?」
そう思う人もいるかもしれませんが、性的指向は今の社会だとプライベートなものとして扱われていないので、カミングアウトしていないと、日々、さまざまな問題に直面するんです。
例えば病気のことだったら簡単に質問はしないし、深く聞いたりもしない……。
相手がそうだと知っていれば、みなさん、気を使いますよね?
でも性的指向の場合は、いきなり
「(異性の)好きな子はいないの?」
「(異性の)彼氏/彼女はいないの?」
「結婚はまだなの?」
とか聞かれてしまう……。
それはとてもプライベートなことだから、気を使わなくてはいけない(もちろん、ちゃんとした人ならそんなこと、聞きませんが)とはあまり思われていない……。
自分がゲイ / レズビアンであることを隠している場合
「好きな子はいないの?」と聞かれたら
「いないよ(いえないな)」
「彼女はいないの?」
と聞かれたら
「いないですね(彼氏はいるけど)」
「結婚はまだなの?」
と聞かれたら
「まだ考えたことないです(したい人がいてもできないよ)」
という感じに嘘をついたり、隠さないといけないのです。
そうして、親しい人との会話の中で嘘をついたりごまかしたりしなくてはいけないと、罪悪感を感じます。孤独感も、怒りも、寂しさも感じます。
この人とは本当の意味では繋がれてはいないのだ……本当の自分をわかってはもらえないのだ、という絶望感に打ちのめされたりします。
人は、秘密を抱えていては親しくなれない……。
僕もそうですが、カミングアウトしていない相手には世間的に問題のないような回答をしなきゃいけないので、いつも緊張していなければなりませんでした。
そういう質問がいつ、どこから飛んでくるかわからないので、自覚したての時などは四六時中身構えていたので、とても疲れました……。
かといって流すのに慣れてしまうのも嫌なんです。
なのでこの本は当事者だけじゃなく、むしろ周りの人やヘテロセクシュアル(異性愛者)の人に読んでもらいたいのです。
Ⅰ・Ⅱ章では当事者がどういう思いでいるのか、その家族や周りの人がどう受け止めてきたのかを実際の往復書簡を通して知ることができます。
Ⅲ章では先ほど触れたように、カミングアウトが必要な理由、カミングアウトをされたときにどうしたらいいかを教えてくれます。
誰だって、いつ、どこで、誰にカミングアウトされるかわからないのですから、
読んで損はないと思うのでぜひ!
実はこの本は、僕がセクシャルマイノリティ関連で初めて買った本でもあります。
表紙がおしゃれで、タイトルからセクシャルマイノリティ関連の本だとわかりにくいので買いやすかったんですよね。
図書館に置いてあった時に手を伸ばしやすいし、借りやすいかなと思います!
僕が小学生の時はPTA図書?なるものがあって、子ども用の本と大人用の本が回ってきていました。
今もあるのか、全国的なものなのかはわかりませんが、もしそういった取り組みがされている学校があるのなら、その図書に
「カミングアウト・レターズ」
を入れてみるのもいいかもしれません。