【赤木かん子還暦おめでとう企画】 105 「いいよ」
「いいよ」 by taka
思い起こせば今から20年近く前のことだ。
学校図書館に人を……、と言い続けていたら、じゃあ、あなたやってね、と言われ、学校図書館に行くことになったが、さて何をしたらよいのかさっぱりわからず、当時、学校図書館に関しては発展途上国であるわが県にはお手本になる方も見当たらず、途方に暮れた。たまたま見ていた児童書の雑誌の最後のあたりにあった、著者の一行近況報告みたいなものに目が留まったのは、偶然としかいいようがない。
「学校の図書室を改装しています。」
みたい感じの一文だった。いまよりずっと貧弱なネット環境の中から連絡先を探し出し、何とか日帰りができそうな場所で改装があると分かって、恐る恐る見学の申し込みをしてみた。
帰ってきた返事は
「いいよ。」
という電報のようなお言葉……。
首をかしげながらも、わらにもすがりつくとはこのことと出かけてみて、また驚いた。
今思えば、そこで行われていたことの半分も分かっていなかったと思うが、それでも、あぁ、図書館が生きて脈打っていると思った。
それから折を見てはかん子さんのもとに通った。
やがて来ていただいて改装や講演をお願いするようになった。
こちらが無理をお願いするたびに
「いいよ。」
という返事をもらった。
学校図書館を取り巻く環境が厳しいことをわかっていて、こちらが熱意を持っている限り見捨てずに
「いいよ。」
と言ってくださった。
かん子さんは道端の捨て猫を拾わずにはいられない人だと思う。
だからね、かん子さん、自分のことも大事にしてくださいね。
還暦おめでとうございます。