かん子の連載

☆楽しい学校図書館のすぐに役立つ小話☆彡【文学について・その1】

物語そのものは太古の昔からありました。
日本は物語が大好きで、本、といえば物語、小説、だと思ってしまうほど小説が好きです。
でも、小説、という言葉を作者や登場人物が自我を備えており,個人が作ったものであると定義すれば「竹取物語」と「源氏物語」から小説が始まった、といってもいいでしょう。
それ以前は、誰が作ったのかわからない、民話・神話・伝説、になります。

というわけで日本最古の小説は9世紀の「竹取物語」でいいと思います(紫式部もそういってますよね)
これは作者不詳ではあるのですが、主人公が近代的な自我を備えているのと(私は私だ、ですね)あまりにも具体的で微細に書いてあるのでこれは個人が作ったものだよね、といわれているのです。
あまりにも出来が良いので紀貫之ではないかと言われてますが、いまのところ、証明されてはいません。
長編では10世紀の「源氏物語」……。
これは紫式部が書いたということがはっきりしています。
つまり、日本には10世紀という早い時代から小説が確立していたのです。
ところが、ヨーロッパでは
13世紀にボッカチオが「デカメロン」という短編小説集をだしていますが、それもペストから逃げてきた有産階級が自分が知っている噂話を話す、というものなので、近代的な小説とはいいにくい。
ヨーロッパに小説が定着するには17世紀までかかります。それまでの文学は詩、韻文、戯曲で、物語は騎士道物語でした(だからシェイクスピアは戯曲なのです)。
けれども都市に住み、商売をして暮らしていく市民、が台頭するようになると、市民の息子が騎士道物語にうつつをぬかしているのは困ります。
親たちが欲しがったのは、勤勉に真面目に働いて成功していく個人の物語です。
かくしてようやく、個人が主人公になる小説、ができあがりました。
つまり、ヨーロッパでは小説は、300年の歴史しかないのです。
日本では千年の歴史があり、日本は小説が得意な民族であるといってもいいでしょう。

2023/03/02 更新