かん子の連載

_/_/_/・_・)o 図書館づくりのエトセトラ・001

<お知らせ(2023/07/30)>
「o(・_・= ・_・)o 本を探す o(・_・= ・_・)o 」から「_/_/_/・_・)o 図書館づくりのエトセトラ」に連載タイトル変更しました。
引き続きよろしくお願いします!

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司書の仕事の大きな柱の一つは、情報……本を探すことです。
図書館というのは
①必要な情報を収集し
②プールし
③還元する
のが仕事ですから。
もちろん探す対象は、本だけではなく、映画やチラシ、パンフレットなど
“どこかに固定してある”
情報ならなんでも扱うのですが、一番比重の大きいのはやっぱり本になります。
そうしてそれは、その本を知っている……ではなく、その本を探し出すツールを知っている、ということを意味します。
子どもの図書館で仕事を始めた人は(学校図書館員はこれに入りますが)このことを知らない人が多いかもしれません。
子どもの本と大人の本は、やりかたが違うからです。
子どもの本は、狭く深く、が信条ですが、大人の本は広く浅く、がモットーです。
いや、浅くなくてもいいんだけど、範囲があまりにも広すぎるので、どうしても、浅く、にならざるを得ないだけなのですが。
100万冊を深く、は無理さ。
なので、答えを知っていることが必要なのではなく、探し出せることが必要だ、になるのです。

大人の本で仕事を始めた人は早々にこのことに気がつくことができます……。
だってお客さまは自分が見たことも聞いたこともない本のことばっかり毎日聞きに来られるですから。
自分はちったぁ本のことは知っている、と思ってたのになんにも知らないんだ、ということをつくづくと思い知らされる新人司書、最初の半年です……。

なので大人の本の司書は
そんな本がホントにあるんですか?
と聞きたくなるような本にやたらと遭遇することになります。
そりゃまあ、だれでも探せるようなものは、初めから聞きに来ないでしょうから、わざわざ図書館に聞きに来られるような本は見つけにくい本に決まってるわけで……。
😅

もういまではないだろうけど(もう統計を紙で出すことはなくなったから)「養鰻年鑑」を頼まれたことがあります。
養殖鰻の統計ね。
そんなもん、あるのか〜?と調べたら、ホントにありました……。
でも考えてみたら養殖鰻で暮らしを立てている人たちは何十万人といるわけですから、あったっておかしくないわけです……。
ただ、本屋さんで遭遇するチャンスは少ないでしょうから、見たことがないだけで。
本屋に売ってたものでも、昔は各地の草野球の試合予定が全部載ってる「週間草野球(タイトルは正確じゃないかもしれないけど)」とか、全国のレディースが載ってる雑誌までありました。
毎回どっかのレディースチームがトップに載ってた。
😁
いや、探せばホントにあるもんだな、というか、実にいろんなことしてる人たちがいるんだな〜、世界は広いや、と、大人の本の図書館で働くと、かなり、謙虚になれるものです。

でも
子どもに対するサービスで始めた人がこれに気がつくのは至難の業です。
子どもの感知している世界、というのがそもそも狭いうえに、相手が子どもなので、たとえば答えを見つけられなくても怒られない、こちらの考えを押しつけることができる、悪く取れば、相手をバカにした仕事をしても、誰にも咎められないからです。
いや、みんながみんな、そんなふうに仕事をしてるわけじゃないのですが、子ども相手の態度の悪い司書がたくさんいるのも事実です。
(しかもそれに気がついていない人も多いのが児童サービスの特徴かもしれません。いいと思ってしてる人もいるので。このことは、またいつか述べます)
もう一つは、子どもの質問というのがこれまた探せない、答えられない、絶句する系が多いので、それに慣れてしまっている、というのもあるかもしれません。
答えられない、に……。
いや、大人の質問だって答えられないことは多いのですが、なんというか質が違うのです。
大人は、幽霊の捕まえ方が載ってる本が欲しい、みたいなことは言ってこないので。

実在するものでも
ゴキブリの触覚の付け根を見たい
と言われたときには……。
そこまで描いてある図鑑……頭の中でパラパラめくりましたが、ないよなぁ。
探したけどこれはやっぱり見つからず……。
これは
本物をとっ捕まえて自分で 見るのが一番早いよ〜
が答えです。
絶対自分じゃやらないけど。

というわけで、今回のお題は
司書は答えを知っていることが大事なのではなく、探し方を知っていることが“できる”ということなのだ、というお話でした。

もちろん、基本的なことはそこそこ知ってなきゃお話にならないけど(これはどんな業界でもそうだと思う)100万冊の本を覚えられるわけがない。
大人の本は、幅が広く、物量がハンパじゃないので、聞かれた本のことを知っているよりも、見たことも聞いたこともないものをどうやって伝手を辿って探すか、という方法を知っていることが“腕”になるわけです。

2023/07/12更新(2023/07/30修正)