かん子の連載

☆楽しい学校図書館のすぐに役立つ小話☆彡【「司書は椅子に座ってピッとやるだけの人じゃありません。学校司書は忙しいんです。・1-5】

学校司書の桜李桃梨(おうりとうり)さんからの寄稿をご紹介しています。
小話とは言えない😅、学校司書さんの忙しい日々をぜひご覧くださいませ~

☆ ☆ ☆ ☆ ☆  

「司書は椅子に座ってピッとやるだけの人じゃありません。学校司書は忙しいんです。」
桜李桃梨

1ー5 整備最終日 8日(月)

朝起きて立ち上がると今日もカラダ、
バッキバキ……。
なので、う〜、今朝も優雅に朝風呂です〜。
全身のこわばりが溶けていく〜。
はぁ、極楽極楽……。

でも今日はいよいよ整備最終日……。
図書館のドアを開けると、眩しい……。
金曜日に取り替えたカーテンときれいにしたカウンターで図書館内、明るい!
金曜日はもう夕方だったので、ここまでは感じませんでした。
でも朝の光で見ると、きれいだわ。
明るいわ。
雰囲気、いいわ♪

さて、今日は何をするかというと、この、全体のごちゃごちゃ感をも少しすっきりさせたい。
なにせ部屋のあちこちに、文庫棚みたいな小型の、いろいろなサイズと色と形の全然統一感のない書架がいくつも置いてあって、足の踏み場もないんです。
しかもその中身がなにかというと、ほとんどがカバーの取れてしまった古い文庫本、二昔前に流行ったような物語、外国文学の名作全集ばっかり!
でもなかには使えるものもあるからね。
いくつもある名作全集のなかから一番きれいで翻訳のいいのを1セット、と新しめのジュニア用の新書サイズの本をあわせて、すみに外国の名作コーナーを……。
「トム・ソーヤーの冒険」とか「宝島」とか「不思議の国のアリス」というような本ですね。
古いのから新しいのまで同じ本が何冊もある!
文庫本のなかからも使えるのを入れていくと、ちょうど三段分、本棚一本分、になりました。
つまり五本分の本は、廃棄か書庫行き、ということになりますね。
あ、ちなみに、本棚は書架といい、数え方は一本、二本、横板を一段、といいます。
だから、6段の書架も、三段の書架も一本、と数えます。

とまあこれだけで、低段の書架、6本片づいたのには驚きました。

あとは書架だ!
と書架を動かそうとしたところへドアがあき、司書教諭の先生が入って来られました。
「あら!ずいぶんキレイになったのね!何か手伝うことはあるかしら?今日午前中は空いているのよ。これ、片づけるの?」
なんて!
なんていいタイミング!!
一応、ひとりでも動かすことはできるのですが(ひとり職場が長いと、そういうコツは覚えるのです)誰かとやるほうが早いに決まってます!!
先生にもマイ軍手(私の愛用の滑り止め付きのもの)をお貸しし、書架を台車に乗せて書庫まで移動することに……。
何本かは、なんというか、かなり安っぽい作りで背中に穴があいてたり、棚板が歪んだりしていて、もうこれは捨てるしかないな〜、という代物。
でも私の一存で捨てるわけにはいきません。
とりあえず書庫に入れといて、あとで聞こう、と思いながら台車に積むと、先生は目ざとく見つけられて
「これ、取っとく必要はないわね、捨てましょう!」
とまっすぐ廊下の端へ……。
「後で誰かに捨てに来てもらうから心配しなくていいわよ」

というわけで、あっという間に部屋の中、スッキリ。

実はこの何日か、図書館前の廊下を校長先生や、いろんな先生が通りすがりにちらちら部屋のなかを覗いていかれていたのです。
そのつど、目礼はしていたのですが、皆さん結構気にしてくださってるのだなぁ、とは思っていました。
でもまさか、助っ人に来てくださるなんて!
そんなことは今までの学校では一度もありませんでした。
この先生、すご〜い……。

と思ったところへ
「このあとはどうするの?」
と聞かれ、隣の部屋に10台ある机を少し減らしたいと思っているのですが、いかがでしょうか、とお伺いをたてると
「たしかに。前から、なんでこんなに机があるのかと思っていたのよ。こんなにいらないわね。1台に6脚の椅子をセットするとして、6台あれば充分よ。今年、一番多いクラスが36人だもの。でも、この机、古くて重いのよ。これを2人じゃ無理だわ。ちょっと待って。誰か呼んでくるから」
と足早に去っていかれました。
凄い!
話早いっ!!
ホントにこの学校の先生がたって、賢い!!!
ちょっとトリハダものです。

片づけるにしてもきれいにしてから、と机を拭いていると、屈強な若手の先生が3人も来てくださり、私はなんにも手伝わないまま、となりの部屋の机4台はきれいに消えてなくなりました。

「ありがとうございます。」
とおひとりずつ声をかけたのですが、皆さんとなぜか目線が合いません。
えっ?
なになに?
と思ってると、皆さん口々に
「噂には聞いてましたけど、ホントに明るくなったんですね〜!驚きました!」と……。

そこですか!
もう私は今朝から慣れて当たり前になってしまったんですが、そうですか、明るいですか、嬉しいです〜、ふっふっ、と思っていると
「いつでも手伝いますから!」
という力強いお言葉が……。
ありがたや、ありがたや。
そうして
「子ども達驚くだろうなぁ!喜ぶだろうなぁ!」
とワイワイ話しながら帰られました。 

司書教諭の先生も3人に
「ありがとね〜。またよろしくね〜」とキッチリ声をかけておられました。
さすが!

というわけで午前中は飛ぶように過ぎ、とっととお昼ごはんを食べて6台に減った机を脚の裏までメラミンスポンジでゴシゴシ磨き、位置と向きを変え、少し居心地のいい雰囲気に。
ちゃんとするにはまだまだ書架の中身を移動させたりしなくてはなりませんが、全部仕上がるまでには一ヶ月はかかるでしょう。
まずは、子どもたちを迎えられるところまでセットしなければ……。

家から持ってきたテーブルクロス用の布を家庭科室でアイロン掛けて、6台の机にかけると、隣の部屋は見違えるほど居心地のいい、雰囲気になりました。
まだ縁を縫ってなくて、切りっぱなしですが、今日はもう縫ってる暇がない。
またあとで縫うことにして、とりあえず見栄えは良くなりました。

カウンターのある部屋も、残った書架とあちこちに散らばっていた、積み木みたいな固めのクッションを集めてささやかなコーナーを作り、丸いテーブルは季節の展示に……。
春のピンク系の布のクロスをかけ、持ってきた「入学おめでとう!」のパネルを飾って、サクラや春の花の本を探してきて飾りました。

あとは棚の中をセットするだけです。

どんなお店でも、店を開ける前に商品棚にハタキをかけて商品がきれいに見えるように並べると思いますが、図書館も同じことをします。
本を全部前に引っ張り出し本の背を棚の縁に合わせます。
こうやって引っ張り出さないと、上の棚の影になって本の背の上半分が暗くなるのです。
そうしてはじをブックエンドで止め、スペースがあれば表紙のカッコいいのを表紙を見せて飾ります。
日本の本は表紙に凝るので、表紙を見せるとその棚がなんの棚だかだいたいわかる、宣伝してくれるのです。
これを全部の棚にするのに、2時間!
かなり急いだのですが、これ以上早くはできませんでした。
途中、廃棄したい本がたくさん目について思わず手が伸びそうになりますが、今日のところは我慢、我慢……。
それしてると終わらなくなりますから。

最後に全部の床に掃除機をかけて終了……。
とりあえず、埃は棚からも床からも消えました。

というところで椅子にへたり込み、ゼエゼエいっていると、また司書教諭の先生が……。

「あらぁ、ホントにきれいになったわね。同じ部屋だとは思えないわ〜」
「こちらでなにかできることある?」
とおっしゃるので、テーブルクロスの縁縫いができるかたはいらっしゃらないかとお聞きしました。
実は、私は裁縫は苦手で、私が縫うとなんというか、キリッと見えないというか、なんかヨレヨレして見えるのです。
ただ単に縁を2回折ってミシンでダーっと縫うだけのことなのですが、いったいどこが違うのか……。
アイロンだって、ちゃんと当てているのに……。 
とまではいわなかったのですが
「いいわ。家庭科の先生がいらっしゃるから頼んであげるわ。きれいに仕上がったほうがいいものね」
と、私を見透かしたようなことをおっしゃる……。

その後から他の先生方が何人も入ってきて、みんな部屋の中を歩き回って、口々に感心したり喜んだりして帰っていかれました。

さて、では、明日からはいよいよ図書館開始です!

2024/06/06 更新