☆楽しい学校図書館のすぐに役立つ小話☆彡【司書は椅子に座ってピッとやるだけの人じゃありません。学校司書は忙しいんです。・3-5】
学校司書の桜李桃梨(おうりとうり)さんからの寄稿をご紹介していきます。
小話とは言えない😅、学校司書さんの忙しい日々をぜひご覧くださいませ~
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3-5 いろいろ
ハイスピードで働く日々にも慣れてきたころ、読書の補助具が届きました。
文字が読みにくい、ディスレクシアという障害をご存知ですか?
ひらがなとカタカナは読めるけど漢字は読めない、とか、読めるけど書くのはダメだ、とか、ゴシック体なら読めるけど明朝体と教科書体は読めない、とか、読みにくさも人それぞれなのですが、そのなかに、白い紙に黒い文字が読みにくい人がいるのです。
私もはじめはそんなことがあるのか?
と思いました。
白に黒が一番見やすいものだとなんの根拠もなく思いこんでいたので。
この補助具は色のついた透明な下敷きで、これを紙の上に乗せると地色がピンクや青になるのです。
全部で11色あり、前の学校で試しに使ってもらったら、本当に何人も
「オレ、緑なら見える!」
とか
「紫が一番はっきり見える」
という人がいたのです。
自分が何色がみえやすいのかわかれば、その補助具を買ってもらって紙媒体を読むときには使ってもらえばいいし、ギガスクールなら、地色を変えるだけで読みやすくなります。
なのでこの学校でも司書教諭の先生にそのことを説明して、一セット注文してもらったのでした。
なので次の月のお話会はどのクラスもこれになりました。
まずは
『なまけてなんかない!』(品川裕香/作・岩崎書店)
という絵本を読みます。
この絵本はディスレクシアの男の子のお話で、怠けてるわけじゃない、そういうハンディがあるんだ、ということを説明してくれる一冊です。
そのあと補助具の説明と、文字が読みにくくないひとでもこれを使うと見やすいことがあること(ホントです。老眼の方は黄色が見やすいです)を説明して、試してもらいます。
小学校の先生がたには以前よりは浸透してきた気がしますが、子どもたちはディスレクシアのことは、ほとんど知りません。
なのでこの絵本を読むと、たいていは驚き、みんな喜んで試してくれるのです。
本当に人によって見やすい色が違うことに毎回驚かされます。
友だち同士でも見やすい色が全然ちがうので、子どもたち同士も驚きます。
毎回、これをやると、そこまでいうと大げさかもしれませんが、新しい世界の扉を開けるような気がします。
自分と同じだと思いこんいたなかよしの人が、自分とは違う感じ方をするのだ、ということをくっきりと発見するのですから。
見えかた、というのは人と比べることができないので、読みにくくても自分ではなかなかそのことには気がつけないのが普通です。
自分と同じように人も見えている、と普通は思ってしまいますから。
ですから、ディスレクシアの人が自分でそのことに気がつくのは三年生以上になってから、が多いのです。
暗記するだけでは勉強が追いつかなくなって初めてわかる、というケースは多いです。
ですからディスレクシアの人は、なるべく早く見つけて補助したい、と思います。
ディスレクシアなら文字を書く練習は、ほとんど意味がないわけですし、試験は口頭に変える必要があります。
書けなくてもキーボードを打てれば文章は書けますし、読めないのなら読み上げソフトを使えばほぼ問題はなくなります。
パソコンのなかなら、文字のサイズも色も書体も自由に変えられるのですから、そういうことを説明すれば苦痛も苦労もかなり軽減されるだろうと思うからです。
なのでいつでも試せるように、この補助具はカウンターの上に常備してあります。
子どもたちは時々やってきては、試して遊んでくれます。
図書館からのお知らせを作る時も、いまはUDデジタル教科書体を使っています。
何年か前に書体デザインの会社が大学と一緒に研究して、この書体を開発してくれたのです。
この書体に変えるだけで読んでくれるひとが増えるし、読みやすいと喜んでもらえます。
なので図書館の掲示を作る時も、必ずこの書体で作ります。
最近では先生がたも書類をこの書体で作られている方が増えました。
ウィンドウズ10には常備されましたので、いまは楽に使えるようになりました。
2025/01/23 更新