小説「なりたい二人」について
篠原さん情報です~!
marinonnette.at.webry.info/201407/article_11.html
講談社の青い鳥文庫の人気シリーズ「若おかみは小学生」は、去年大団円をむかえま
したが、
その「若おかみ」の作者・令丈ヒロ子先生の新作がこちら。
「なりたい二人」令丈ヒロ子著 PHP研究所 2014年
今のダメダメな自分と「なりたい自分」のギャップを
どう考え、どう埋めていけばいいのか、という、
中学生の切実な悩みを、直球どストライクで描いています。
もちろん、令丈センセですからね、ラブ要素もありますが、
今回は、「ラブ未満」でちょっと薄味。
お話は「ラブ以前」の
「わたしってどんな人間なの?」というところに焦点があります。
すごーく良かったです!
中学生はもちろん、小学校高学年の子や高校生にも読んでほしいな。
主人公は、中学1年女子・元原ちえり。
小学校高学年から急に背が伸びてしまい、そのことがコンプレックスで、
中学校では平和に暮したいと、日々とても気を使って「がんばって」暮している。
作品中では、こんなふうに描かれる。
「できるだけ目立たないように背を丸め、うつむいて歩くくせがついた」
「あたしは自分のかっこ悪さをよくわかっていたので、
基本ひかえめに、でも静かすぎて暗いと思われてもいけないので、
最小限の会話はした」
「成績が良すぎても悪すぎても目立つので、
そこそこ勉強もして、ともかく目立たないことに全力をつくして、
この中学校生活を過ごそうと、がんばっていた」
これって、「今の小学校高学年から中高生」の悩みと努力そのものだと思う。
彼らは、悪目立ちしないよう、「みんな」という塊からこぼれてしまわないよう、
本当に細心の注意をはらって暮している。‥‥らしい。
そんな「今ドキの中学生」ちえりの前に、困った課題が現れた。
それは「将来の夢・自分のなりたい職業について」というもの。
二人一組でやることになったこの課題、
ちえりと組むことになったのは、
幼なじみのムギ、こと、森脇武儀(たけよし)。
小さい頃からまるで家族のように育ったムギだが、
小学校5年の頃に「つきあってるの?」と友達に誤解されて以来、
ちえりは、ムギをずっとさけていた。
いやいや二人で始めたものの、
はてさて、本当に二人で課題の発表なんかできるんかいな?
二人の「なりたい」はどうなるの?
‥‥というお話。
読むうちに、ちえりの悩みはひとごとじゃない、と思えてきます。
どうせできない、と落ち込み、
でも本当は、とあきらめきれず、
ひょっとしたら、と望みをつなぎ、
えいっ! と一歩を踏みだす。
その勇気をちえりとムギにもらえます。
ぜひ、読んでみてください!
今回、久しぶりに令丈先生の作品を読んで、
あ~、やっぱりすごいなあ、と思いました。
ここには「今の子」がしっかりいます!
今の子って、
「空気を読んで」、できるだけ「みんな」と同じにしている感じです。
(もちろん、そうでない子もいるでしょうけど)
強~い同調圧力に、必死で合わせているわけだけど、
それに無自覚で、でもなんかしんどくてイライラする。
だから、ちょっとでもみんなと違う子に攻撃が向く。
攻撃されるから、ますます固く身をすくめてみんなと同じようにする。
さらに圧力が高まり、ますます苦しくなる。
でも、無自覚だから、ちょっと違う子を標的にいじめる。
という、負のスパイラルを生きている感じが、外からは見える。
でも、中の子どもたちは気づかない。
気づいたら大変だからってのもあるかもしれない。
でも、そんな「同調」に神経すりへらして生きるより、
もっと自分の「好き」や「興味」を大事にしてみようよ。
ちょっと目をあげたら、違う風景が見えてくるよ。
助けてくれる人も現れるよ。
自分のまわりに、今までとは違う風が吹いてくるよ。
キミの人生は中学3年間だけじゃない。
学校にいると、学校だけが「世界」になっちゃうけど、
本当は、学校の外の世界のほうが何万倍も広くて面白い。
その世界の入り口は、キミのすぐそばにあるんだよ。
物語を読みながら、おばさんはそんなことを思いました。
今を生きる今の子どもたちに、この物語が届いて欲しいです。
で、すごーく面白かったんだけど、
最後に一つだけ不満点は、表紙です!!
これ、ストライプがキャラを台無しにしてます。
どーしてこういう表紙なんだろ。
いやまあ、「児童文学」にしてはがんばってると思うよ。
表紙の「ふたり」の絵は、かわいいと思う。
このイラストレーターさん、「メニメニハート」の方ですよね。
ちえりちゃんかわいいし、ムギくんのぽっこりおなかもかわいいです。
でもなあ。
子どもたちの関心をめぐって、
世界最先端のアニメやマンガと競わなくちゃならないんだから、
もっとセンスよく、かっこ良く、攻めてほしいです。
別にアニメ絵にしろってんじゃないけど。
アニメ絵にしたところで、なんかシロウトみたいな人に書かせるし。
中身はすごくいいのに、
表紙と装丁で損をしている作品が多すぎて、
ほんとに悲しいです。(;_;)
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